い・き・の・ね – VERSE TERMINAL –

西淀川アートターミナルは企画展「い・き・の・ね -VERSE TERMINAL-」を開催します。この度は大阪市北区にてgallery yolchaを運営するイルボンをキュレーターに迎え、3組のアーティストによるサウンドを主としたインスタレーションの展覧会となります。
本展のタイトルは、イルボンも所属する出展アーティスト団体である大所帯非楽器アンサンブルPOLY!の、ここ西淀川区でのフィールドワークを経て生まれました。人の営み、街の営み、ここに生きる動植物や、遠い海から流れ着いたクジラ、打ち捨てられたモノに至るまで、本展はそれらの呼吸が行き交うターミナル(呼吸するシマ)をイメージして創られた空間です。
皆様におかれましては、ここに点在する多様な現象に耳を傾けたり目を凝らしたりして、思い思いに過ごしてみてください。ひとつひとつ誰かの呼吸を確かめるように、意識を研ぎ澄ましたり、ただ何も考えずそれらが流れる様子を眺めてみてください。そしてその皆様の呼吸もまた、このシマの一部になれば幸いです。私たちはどんな些細な呼吸も、いつか誰かの観察の対象になることを願っています。

[展示アーティスト]
大所帯非楽器アンサンブルPOLY! | Non-Musical Instrument Large Ensemble POLY!

2017年夏前、「非楽器による大所帯アンサンブルしましょう。」という呼びかけに応じて自作楽器を操る音楽家や、ガムラン演奏者、カヌーイスト、舞台俳優、ダンサー、詩人、ギャラリーオーナー、絵本作家など各分野で活動している幅広い年代の表現者が緩やかに集合。規格化されたdaily necessities, commodity goods =日用品たちの 潜在能力を掘り起こし、あらたに個性的な音を奏でる奏具として捉え直す。そうして再発見された奏具を様々な バックボーンを持つメンバーたちが使用することにより“ドレミ”の外側に飛び出すPOLY!ならではの表現と予想のつかない音を介した現代ならではコミュニケーションの出現を目論む。電動歯ブラシ、紙コップ、ラジオ、ホース、 ウォーターボールなどを用いながら、ライヴを展開。2023年からは自分達を取り囲む環境とのコミュニケーション、 関わり方をより意識しながら活動の幅を広げていく予定。主な活動に「Holiday Performance vol.10」(ロームシアター京都/京都、2022年)、「サウンドパフォーマンスプラットフォーム2019」(愛知県芸術劇場/愛知、2019年)、「ソトPOLY!シリーズ/シマPOLY!2019」(自主企画、瀬戸内海 志々島・粟島/香川県、2019年)、「KAVCアートジャック2018」(神戸アートビレッジセンター/兵庫、2018年)

今今 |konkon

2018年結成。中西朝美・髙畑紗依によるユニット。今を切り取って積み重ねることを目的に活動している。日常的に目にした些細な現象やものを採集し、光や影・音・小さなオブジェなどへ転換した作品を制作。ワークショップや イベントなども行う。主な展示に「小波の庭」(kumagusuku/京都、2021年)、「sign 気配」(グループ展, アトリエ三月/大阪、2019年)、「耳でみつめる、目をすます」(gallery yolcha/大阪、2019年)、「呼吸の部屋」(chago residence gallery(現 gallery yolcha FLAT space)/大阪、2018年)、「呼吸の部屋」(ROOOM/京都、2018年)

嶋田晃士 |SHIMADA Kohshi

美術大学在学中に「音」を用いた表現に興味を持ち、サウンド・スカルプチャーを制作する。その後、「音」をメインに扱いながらも、複合的にメディアを用いた作品を制作するようになる。自分自身と現実との関係を俯瞰したいと思い、しばしば電子機器やコンピューターを作品に取り入れている。近年ではスマートフォンやデジタル信号等を用いながら、身の回りにある情報を捉え直した作品の制作、発表を行っている。主な個展に「City Flicker」 (展示を含むレジデンス・プログラム,Treasure Hill Artist Village, Frontier Gallery No. 11/台北、2020年)、「トレモロとモールス“Kohshi Shimada Exhibition”」 (GALLERY ART POINT/東京、2019年)、「Beastie Beats Exhibition ルッソロと過去からの未来をたよりに」(京都芸術センター/京都、2014年)「音の狭霧」(武豊町民会館 ゆめたろうプラザ/愛知、2012年)。主なグループ展に「In Site Out」(Art Bace Coromo/愛知、2022年)、「大京都 2020 in 和束『未開へのわだち|Ruts to the new uncivilization』」(株式会社すぎもと倉庫/京都、2020年)、「京都:Re-Search in 和束2019」(レジデンス・プログラム・活動報告展,和束町体験交流センター/京都、2019年)、「SICF19」(スパイラル3F スパイラルホール/東京、2018年)、「第12回タグボートアワード グループ展」(世田谷ものづくり学校 IIDギャラリー/東京、2017年)


[関連イベント]
大所帯非楽器アンサンブルPOLY!  LIVEインスタレーション
1回目:3月25日(土)12:00~|2回目:4月2日(日)18:00~
参加無料 当日参加制 定員:20名まで

大所帯非楽器アンサンブルPOLY!が音の展示作品(=サウンド・インスタレーション)を通して街に漂うさまざまな物語を浮かび上がらせます。1回目は初日に皆さんの前で実際に作品の設置を行い、メンバーやプロジェクトに関わってもらう人たちと共に、時に絵を描くように、時に歌うように、時に彫刻のように空間に作品を展示していく様をライヴパフォーマンスとして展開します。2回目は展示されていた配置をさらに再構成。作品が目の前に立ち上がってまた、変容していく様子をご覧ください。

アーティストトーク
3月25日(土)LIVEインスタレーション終了後(13:00頃予定)
観覧無料 当日参加制
登壇者:イルボン/江南 泰佐(大所帯非楽器アンサンブルPOLY!)、中西朝美/髙畑紗依(今今)、嶋田晃士、藤江徹(NAT館長)

本展の作家、キュレーターと本館館長である藤江徹によるトークイベント。作品や展示に至るまでのプロセス、コンセプトについて楽しく話し合いながら、西淀川アートターミナルの可能性や地域の未来について考えていきます。

[ステートメント]
息の根という言葉に続くのは大抵「止める」という動詞である。
なにやら物騒だが、息の根そのものは命や呼吸を表す語である。
逆に言うと、それは止めないと続いてしまうものなのだ。
絶え間ない波のように、息が寄せては返し、われわれは生命活動する。
果たしてわれわれの息の根っことはどこを指すのであろうか。

人々の呼吸は、彼らが住む街の呼吸を形成し、その発着地点を曖昧にする。 連綿と続く命の途切れなさ、そのルーツのあやふやに、 われわれは苦悩し、また同時に救われてもいるのだろう。 本展では、国内各地で制作を行う三組のアーティストを擁しながら、 声、音響、映像等を用いて、呼吸するシマ “VERSE TERMINAL”をオルガナイズした。 会場に点在するどの呼吸を意識するのか、もしくは何気なくスルーするのか、 来場者の息の根も、このたくさんの息吹が集うシマの一部になるだろう。

先日、本展のリサーチのために淀川河口まで自転車で出掛けた。 すると写真を撮ったその場所で、後日珍しい迷いクジラの報道があった。 実は古来から万葉集に住吉津(大阪湾)で勇魚(いさな=クジラ)が出る歌がある。 住吉大社では幻の奇祭として知られる「鯨まつり」が2011年に復活し話題を集めた。 時々迷い込んだクジラは鯨神として崇められ、漁民を潤す福の神として奉られたという。 猛々しく潮を吹くクジラの息吹は、大阪に住む人々の息吹を繋いできたのだ。 ニュースになった例の迷いクジラの息の根は止まったそうだが、 その息吹は今ここに結実していると、わたしは勝手に思っている。

イルボン(gallery yocha/大所帯非楽器アンサンブルPOLY!)

gallery yolcha|ギャラリーヨルチャ
大阪市北区の有形文化財・豊崎長屋の一角に建てられた、特殊な木造建築を利用したギャラリー。ヨルチャとはハングルで列車の意。ジャンルや地域を 問わず各地で活動する作家を紹介しています。また、隣接する長屋を改装したオルタナティヴスペース「FLAT space」でも展示やイベントを開催しています。
Website: https://yolcha.jimdofree.com

会期:2023年3月25日(土)- 4月3日(月)


休館日:会期中無休


開館時間:12:00–19:00


参加アーティスト:大所帯非楽器アンサンブルPOLY! | 今今 | 嶋田晃士


キュレーション・展示企画:イルボン(gallery yolcha


主催:西淀川アートターミナル運営会議 共催:西淀川区地域振興会 助成:大阪市助成事業 協力:西淀川区役所/公益財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)